コラム
2026/07/20 外壁塗装, 屋根塗装
パミールや直貼りは塗装不向き!新築10年目の外壁・屋根メンテナンスで絶対にやってはいけない落とし穴
新築から10年を迎える戸建て住宅において、外壁や屋根のメンテナンスを検討することは非常に重要で、適切なタイミングです。しかし、結論から言いますと、必ずしも「全ての住宅において、ただ単に塗り替え(塗装)をすればよい」というわけではありません。
建材の種類や、当時の施工方法、そして現在の劣化具合によっては、「絶対に塗装をしてはいけない(塗装するとかえって建物にマイナスの影響をもたらす)」ケースが明確に存在します。日本の住宅事情や建材の特性を踏まえ、その根拠を分かりやすく解説します。
コラム監修者

株式会社 麻布
営業部 渡辺光信
・昭和44年生まれ、水瓶座、A型
・趣味はスポーツ観戦、映画鑑賞
・好きな食べ物はお寿司
・建築物石綿含有建材調査者、雨漏り鑑定士
1.塗装してはいけない外壁・屋根材とその特徴
日本の住宅市場では、2000年前後に大きな転換期がありました。健康被害をもたらすアスベスト(石綿)の規制が段階的に強化され、各メーカーが急遽「ノンアスベスト(アスベストを含まない)建材」へと切り替えた時期です。この切り替え初期の製品や、特定の工法で建てられた外壁・屋根には、塗装ができないものがあります。
代表的な「塗装NG」の屋根材
- ニチハ『パミール』
(導入時期:1996年〜2008年頃)
ノンアスベスト屋根材の先駆けとして大量に普及しましたが、素材の吸水性と強度のバランスに重大な課題を抱えていました。

▲パミール
- クボタ(現ケイミュー)『コロニアルNEO』『グリシェイドNEO』など
(導入時期:2001年〜2008年)
こちらもアスベスト規制に伴い急造された「初期ノンアスベスト屋根材」製品で、非常に脆く、負荷がかかると簡単に割れてしまう性質を持っています。

▲コロニアルNEO
代表的な「塗装NG」の外壁
- 『直貼り工法』で施工されたサイディング外壁
(導入時期:2000年前後より前に主流)
製品の問題ではなく「施工方法」の問題です。現在の住宅は外壁材の裏側に空気の通り道を作る「通気工法」が標準ですが、古い住宅では防水シートの上に直接サイディングを釘打ちする「直貼り(じかばり)工法」が多用されていました。

▲直貼り工法の外壁に塗装した塗膜に出た「熱膨れ(ねつぶくれ)」
2.経年で現れる劣化症状とその原因
これらの建材や工法は、時間が経つと特有の重篤な症状が現れます。
パミール(屋根)の症状と原因

▲パミール屋根の層状剥離(1)

▲パミール屋根の層状剥離(2)
- 症状:築8〜10年を過ぎると、屋根材の先端がパイ生地やミルフィーユのようにパリパリと何層にもめくれ上がって剥がれてきます(層状剥離)。
- 原因:製品の製造過程における層構造の結合力が弱く、雨水の吸収と乾燥を繰り返すことで内部から分離してしまうためです。
初期ノンアスベスト屋根材製品の症状と原因

▲グリシェイドNEO屋根の欠落症状(1)

▲グリシェイドNEO屋根の欠落症状(2)
- 症状:屋根全体に無数の細かいひび割れが走り、踏んだり触ったりするだけで扇状に大きく欠落します。
- 原因:素材自体の強度が極めて低く、経年劣化による乾燥収縮の負荷に耐えられないためです。
直貼り工法(外壁)の症状と原因

▲熱膨れ
- 症状:熱膨れ(ねつぶくれ)の発生。外壁の表面がぷくぷくと水膨れのように膨らんだり、塗膜がペロリと剥がれたりします。
- 原因:壁の内部に発生した結露や湿気が、裏面の空気層(逃げ道)がないために外側へ抜けようとし、塗装の膜を内側から押し上げてしまうためです。
3.間違えて塗装した場合の不具合やトラブル
もし「ただの塗り替え」を行ってしまった場合、短期間のうちに不具合の発生が予想されます。ものによっては深刻になったり、施工した場所以外のところにも影響が出る可能性があります。
塗膜の剥離と無意味化
パミールなどの層状剥離している屋根に塗装をしても、「塗装した表面の層ごと」一緒に剥がれ落ちます。せっかく費用をかけて塗装しても、短期間で水の泡になってしまいます。
内部結露の悪化と建物の腐食(二次災害)
直貼り工法の外壁に一般的な防水塗料を塗ると、湿気の逃げ道が完全に塞がれてしまいます。結果として壁の内部で水分が滞留し続け、気温差による結露の発生により、建物の柱や土台といった重要構造部を腐食させる二次災害に発展します。
訴訟や損害賠償トラブル
施工後の不具合として、施主と施工会社の間で裁判・訴訟トラブルに発展してしまうケースが後を絶ちません。「施工の問題」か「製品の問題」かで施工側とメーカー側の主張が真っ向から対立し、施主が置き去りにされてしまうパターンになります。
4.塗装以外の有効な修繕方法
これらの建材・工法に対しては、塗装ではなく「構造自体を作り変える・覆う」メンテナンスが必要です。
屋根(パミール・コロニアルNEOなど)の場合
- カバー工法(重ね葺き):既存の屋根の上に軽い防水シートと新しい金属屋根(ガルバリウム鋼板など)を被せる方法です。廃材が出ず、費用も抑えられます。
- 葺き替え(ふきかえ):傷んだ屋根材をすべて撤去し、下地を直して新しい屋根に変える工法です。
屋根カバー工法の「費用対効果」「断熱性・遮熱性」は評価されている一方、デメリットや注意点もあります。客観的なデータを元に解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
▼関連コラム:
https://azabupaint.co.jp/column/p4735/
外壁(直貼り工法)の場合
- 外壁の張り替え:既存のサイディングを全て剥がし、木下地を直して「通気工法」へと施工し直した上で新しい外壁材を張ります。最も根本的で確実な解決策です。
- 金属サイディングのカバー工法:状態によっては、湿気を逃がす対策を考慮しながら上から軽い金属サイディングを張る場合もあります。
5.一般のオーナーが持つべき知識と判断基準
建物の持ち主や中古住宅の購入者が、専門的な建材名や工法を自力で完璧に見分けるのは大変困難です。しかし、違和感に気づき、失敗を回避するためのセルフチェックの基準はあります。
塗装を考える際は、ご自身の目で建物の以下のポイントをチェックしてください。
| チェックする場所 | 見るべきポイント・異常の兆候 |
| 屋根の先端・隙間 | 地上やベランダから見上げて、屋根の先がパイ生地のようにめくれていたり、一部が四角や扇状に欠けて割れ落ちたりしていないか(パミール等の疑い)。 |
| 外壁の表面 | 陽の当たる場所やベランダの内側などで、外壁の表面が水膨れのようにぷくぷくと浮いている場所がないか(直貼り工法の疑い)。 |
| 新築時の図面・書類 | 「仕上げ表」や「図面」などを確認。屋根材の「製品名」にパミール等の記載がないか、外壁の仕様に「通気工法」の文字があるかを確認する。 |
もし図面がなく、目視で上記のような「部分的な剥がれ」や「妙な浮き」を見つけた場合は注意してください。ただ単に塗り替えをすれば直る・維持できるという発想からあらためましょう。
まとめ:専門会社に診断を依頼すべき
新築から10年という節目は、見た目を綺麗にするだけでなく、「この家がどのような建材で、どう建てられているか」の健康診断を行う時期です。
これまで解説した通り、外壁や屋根の修繕は、建材の歴史(ノンアスベスト移行期)や建築構造(直貼りと通気工法)に関する深い専門知識が不可欠です。単に「安く塗れます」とアピールするだけでは、塗装してはいけない建材であることを見抜けず、我が家を台無しにするリスクがあります。
建物を長持ちさせるためにも、外壁屋根の塗り替えを検討する際は、単なる見積もり比較ではなく、建築士の資格や外壁の劣化診断の専門知識を持った確かな会社にしっかりと建物診断を依頼し、根拠のある修繕計画を立ててもらうことを強くお勧めいたします。
